ようこそ マニュアル車の運転テクニックと車の運転入門 へ

  1. ホーム
  2. コラム
  3. 半べそを・・・

半ベソをかいていた運転手さんの話し

珍しく大型のトラックが会社へやって来ました。

最近では軽四輪の宅配便も有りますし、大きくても2〜4トン車が普通は来るのですが、何と大型観光バス並みのボディでした。
全長、全幅、全高とも目一杯と云うカンジです。

いつも来る有名な運送会社では無くて、見たところ、遠方からあちこちへと荷物を降ろしながら廻っているという風でした。
この運転手さんは、どうにもツキが無かった様です。
少なくとも今日のところは。
いつもこうだったら悲惨としか云いようが有りませんよ。

会社の前の道路は、道幅が4mも無く大型車にとっては非常に狭く、構内への出入りもやりにくいのが実情です。
門の広さも 大型車に合わせた訳でもありませんし。
が、しかし、それにしても進入に時間がかかりすぎるし、入って来てからも切り返しがなかなか出来ない。
極めつけは、荷下ろしが済んだ後 構内から外へ出られなくなってしまった事です!!

一体そこには何がーっ!!

第一、そんなにヘタクソだったら、オチオチ走れない筈です。
変だと思いつつ、出るときには 見かねて応援に飛び出しました。
その甲斐もあって、その後は一発で表へと出ることが出来て、非常に喜んでもらいました。
完全に、彼は落ち込んでいて、どうにも仕方がないといった状態でした。
本来ならば、当然 自力で突破出来ていたでしょう。

彼は、車は会社の構内において、自分は道路の中央に立ち、道路に対してどの角度で出ていくかなどを検討していました。
いや、むしろ立ちつくしていた、と言う方が近かったかも知れなかったでしょう。
そこに立っていても、解決はしないでしょうが・・・
なんと、この後意外な事実が明らかにーーー

その、運転手さんが、開口一番に言った事は 「「ミラー」がこれなんだよーー」でした。
ぎょぎょっ、左側のミラーは、大きな土台の中にちっぽけな物が ガムテープの切れ端と荷造りヒモで、どうにか貼り付けた様な有様でした。
ご存じの通り、大型車のミラーは、縦・横ともかなり寸法がありますが、黒いプラスチックのベースの部分はそのまま取り付いていましたが、肝心の鏡の部分の何と心細い事。
運転席のルームミラーを取り外して、それを壊れてしまったフェンダーミラーの代わりに、縦長に何とかくっつけていたのでした。
元のガラスはかけらも残っていませんでした。

これでは、左側の視界は悪いに決まってますね。当然 恐ろしくなって来ます。
普通乗用車だけを運転する方には、もしかするとこの恐怖感は理解して頂けないかも分かりませんが。
前輪と後輪の間隔(ホィールスパン)が長いので、左折時に巻き込みや脱輪をしないようにと考えても、ミラーで視界を確保出来ない事には、出たとこ勝負になってしまいますね。
あぁ、クワバラクワバラ。
車線変更だってままになりません。
左の車やバイクに体当たりしかねません。

そもそも、狭い道を直進するだけならば、バックの方が走りやすいのですよ。
但し、ちゃんとフェンダーミラーがあればネ。
彼が、不慣れな土地へ配達に来て、場所が分からずに途中で電話をかけて聞いていたのを知っていますが、対応した女性が間違って教えてしまったので、ウロウロしている内にミラーをぶっつけてしまったのでは無いかと考えると、尚更気の毒になりました。
しかも、2度も間違った説明を受けているようなのです。
さすがに、どこでぶつけたかまでは聞けませんでしたけれど。

思い起こせば、旅行の時に会社へ来てもらうバスにしても、駐車する場所も進入方向も、車体の大きさと運転手さんの考えによって、みなまちまちです。
幹線道路に止めてしまう時、門の前の枝道までは入って来るケース、前進で来て構内で切り返す場合、バックで枝道を入って来てそのまま門の中へ入るテクニシャンもいます。

ワンマンだと、長い枝道をいつまでもバックで走るのは、周囲の交通を考えれば出来ませんが。
こういう時はガイドさんが重要になります。
綺麗なおねぇさんである前に、上手に笛が吹ける事が条件ですね。

車体をなるべく斜めにして、右側を擦る寸前まで幅寄せして、そのまま直進で門から出て、正面がぶつかる寸前で左へ切る。
そうすると、左側は充分に空いているのです。
出してあげる事に専念していたので、私が持っている予備のミラーを渡し損ねてしまいました。
あれならば、充分に代用品の役目を果たせたのになぁー。
彼はその日 1日、相当の苦労をした事でしょう。
誠にお気の毒です。